守屋 美保

「自分が存在している事への実感を求め、その実感に再び共感するために描かれる」
 
一度描いたら消せない素材で描かれた線は、私達が生きる後戻りできない時間が流れる世界をあらわし、線同士が密集し繋がっていく様は、それでも時間は追憶することやまだ見ぬ未来へ思いを馳せること、それを考えている今という時間を軸にして、自由に交わっていけるという精神内の時間の不思議な面白さをあわらしていると考えています。
 
ペンを握る手の行く先は、手が動きやすい方向に合わせているので、描かれるのは「必然的に描かれた偶然の線」です。
 
自分が描いている以上、全くの偶然ではありませんが全てを支配していないということでほぼ無意識的に「描かれて」います。
幽体離脱のような感じ、といっても良いかもしれません。
描いている私はフワフワと無意識で偶然の中に居て筆を運び、それを背後で見ている常に冷静なもうひとりの私が存在しています。
もうひとりの私が常に最小限の制約を加えながら作品は描かれていきます。
(守屋美保)